月別アーカイブ: 2021年5月

「知覚の深度|Perceiving in Depth」_ Lights Gallery

版画家 倉地比沙支氏との二人展「知覚の深度|Perceiving in Depth」をLights Galleryにて開催いたします。

新作となる「呼吸を追う」,「知覚のはかり」の連作を中心に展示しております。


 

芸術表現に、偶然性と緻密性という両義があるとするならば、ガラス表現はどちらかと言えば高熱で流動化したガラスを技術と瞬間技で操る表現であり、植村氏の作品に出会うまでは、間違いなく前者であると思い込んでいた。一度成型したガラスを再変換する彼の子細な構築性が、お互いにどう絡むのか、あるいはどう絡まないのか、楽しみである。

-倉地比沙支-


 

知覚の深度DM

 


 

これまで気配や空気といった目には見えないが意識することができる“もの”を可視化、あるいはより感覚と共振させる場を生み出すことを表現主題としてきた。
昨今の身の回りを包む、閉塞感のような鈍く重たい気配をもった空気のなか、「かつて」と「いま」、さらには「これから」の間にある隔たりを意識してみる。

呼吸によって空間が生じたガラスは、重力や遠心力、熱といった目に見えない力によって、しなやかに最も効率的に姿を獲得していく。
そしてその時々の空気によって膨らんだ空間は、金属の支持体から離れ、絶えず周囲の空気が流れ込み、保持していた空気を入れ換える。
呼吸の姿に合わせて空間へと刻まれた無数の起伏が、流れ込む新たな空気に触れ、共振していく。
「かつて」と「いま」を重ねるように往復し、新たに迎える「これから」を待つ。

一方で機械によって生み出された板状のガラスは、錫のプールによって自らを延ばし、限りなく水平な平面性を持っている。
建物の一部として、日常のなかで「あちら/こちら」の空間を切り分け、同時に屈折しながらも透過する光によって、「あちら/こちら」を繋ぎあわせる。
柔軟に形を変え、透光性によって確かにも不確かにもなるガラスという素材は、五感によって捉えがたい気配や空気といった“もの”を表現するための素材と成り得ると考えている。
“もの”に見立てたガラスの外縁を彫ることで、目には見えない隔たりを捉え、その奥行きを知覚する術を探っていく。

本展示の会期中、Lights Galleryの空間へ、開かれた扉を通る空気や季節の柔らかな光が満ちていくだろう。
それらの“いま”と倉地氏の作品から漂う気配や記憶、そして訪れた人々の感覚に、ささいな手跡が共振することを願っている。

2021.5.20
植村 宏木

 


 

呼吸を追う

呼吸を追う

倉地比沙支 × 植村宏木
「 知覚の深度 | Perceiving in Depth

5.21fri,22sat,28fri,29sat,
-6/4fri. 5satは、愛知県緊急事態宣言発令に伴い特別に会期延長対応致します-

12:00 – 18:00
〔予約制〕3日前までに事前予約をお願い致します。
info@lights-gallery.com

Lights Gallery


倉地比沙支 Hisashi Kurachi
版画家
1999 ノルウェー国際版画トリエンナ-レ・台湾国際版画ビエンナ-レ受賞
2005 エプソンカラーイメージングアワード・クラコウ国際版画トリエンナーレ受賞
2006 名古屋市芸術奨励賞
2009-12 第2、3回バンコク国際版画トリエンナーレ受賞
2007  Show me THAI – みてみ☆タイ(東京都現代美術館)
2014 アイチのチカラ!戦後愛知のアート、70年の歩み(愛知県美術館)
2015 REN-CON ART PROJECT -連茎する現代アート-(名古屋市芸術創造センター)
2019 愛知県美術館リニューアル・オープン記念 アイチアートクロニクル1919-2019